第242話:マリス・ヴェール

夕暮れまでには、追跡の対象は帳簿に記された名前から、旧式のシステムの奥に潜む亡霊へと移っていた。

マーティン家の警備班は、まず誰もが思いつく経路から当たった。退職者登録簿、医師会の保管記録、出国履歴、年金データベース、介護資格の認証記録、教会への寄付記録。だが、どこにも引っかからない。マリス・ヴェイルは何年ものあいだ、壊れやすい仕組みの隙間をすり抜けながら、そのどこにも姿を残さずに生きてきたのだ。

その流れを破ったのはノアだった。

ただ勘が働いたからではない。

苛立ちからだった。

「これは逃避じゃない」ミラシアのタウンハウスに設けられた仮設作戦室から、彼はそう言った。「老いなんだ」

...

ログインして続きを読む